認知症でわがままな親の介護

認知症なのか?介護している親のわがままが酷くて身体も心ももう限界
そんなご相談をたくさん受けている私ですが、なかなかそれって難しいご相談なのです。
子供が親の介護のできる範囲を超えている場合は、もう老人ホームのことも考えないといけません。
でも
親自身は「老人ホームになんか入りたくはない」と考えている。
子供は「いまのこの介護地獄から一日でも早く解放されたい」と考えている。
からです。
しかし、老人ホームを嫌がる親を施設に入れることはそう簡単なことではありません。
そして適当に老人ホームなどの介護施設に無理やり親を入居させても
「なんて親不孝なことをしてしまったんだ!」
と後悔する方ばかりなんです。
ですから
認知症の親を老人ホームに入れる
ことを考える前にしっかりと現実を知って欲しいと私は考えています。

わがままな認知症の親の介護も限界ならそろそろ老人ホームも考えて

認知症 親 わがまま

高齢者のための終の棲家を探すことはとても難しいテーマでもあり、私たちも常に「これが果たして正解だったのか?」と自問自答しています、
それくらいとても難しい問題ですし、どれが正解とは誰も断言できない現実もあります。
最後まで今の家で暮らし続けたいという親の気持ち
子供の気持ちと介護がもう限界という厳しい現実
それを両立させることははっきりいって不可能といってもいいでしょう。
しかし、親にとっても子供もとってもベストな選択肢はなくてもベターな選択肢を探すお手伝いをしています。

今回は
介護している認知症の親のわがままにもう限界ならそろそろ老人ホームも考えて
老人ホームを嫌がる親を施設に入れる手順|親を捨てる覚悟とお金の準備

についてみなさんと考えてみたいと思ってこの記事を書いています。


介護している認知症の親のわがままにもう限界なあなたに4つの質問

認知症の親を老人ホームに入れる

わがままな認知症の親の介護に疲れ果てているあなたじゃ
そろそろ在宅介護も限界
 老人ホームにはいてもらおうかしら

と考えているかもしれまsねん。

でも、親を老人ホームに入れるのも簡単ではないのです。
そこには@気持ち」と「お金」の問題を解決しなければなりません。
そこで、あなたに4つだけ質問させてください。

①あなたに親を施設に入れる覚悟はできていますか?

みなさん「親を施設に入れる」ということの現実をあまり知っていないように感じている私です。
もしくは「今の介護地獄から1日でも早く解放されたい!」と見て見ぬふりをしているかもしれません。

老人ホームに大きな期待と幻想を持ってはいけません

脳梗塞を発症して介護が必要になった時にたくさんの老人ホームを見て回りました。
専門病院から老健(老人保健施設)に移らされ、数か月後に老健側から
「自宅に帰られますか?施設に入られますか?」
と究極の選択を迫られました。
綺麗で快適な老健を老人ホームと勘違いしていた私は慌てて現実を突きつけられたのです。

※老人保健施設は「病院」から「自宅or老人ホーム」への中間施設でありリハビリを行いながら次の住まいを考えます。
 老人保健施設ではたいて3か月程度までした入居できません。

慌てていろいろな老人ホームを探して回った私の結論は
「こんなとこにうちのお母ちゃんを入れられるか!」
というものでした。
それは綺麗で快適だった老健とはかけ離れた場所だったのです。
臭いニオイはするし、認知症の方が大声でわめいて暴れているし・・・
気に入った老人ホームはとてもそんな高い費用は払えないし・・・

そこで私は実家に母を帰らせる選択を決断しました。
母の介護をできるのは私だけでしたし、自宅に帰らせることの決断は私が兄や姉に宣言してしまったのです。
しかし、その案の定 介護は想像以上の地獄の日々でした。
認知症が進んだきた母がどんどん毒親化していきました。
24時間365日介護中心の生活で仕事どころではありませんでした。

そんな母の介護が7年ほど続き、母は天国へと旅立ちました。
正直、母を失った大きな悲しみと介護地獄から解放された少しの安堵感が入り混じったというのが本音です。

老人ホームの負の部分をから目を背けないでください

多くの皆さんが老人ホームに対して過大な幻想をお持ちです。
決して老人ホームが高齢者にとって快適な終の棲家とは言えない現実を知っておいてください。

老人ホームでは良くも悪くも集団生活です。
好きな時間に起きたり寝たりすることもできません。
好きな食べ物を好きなだけ食べることもできません。
あなたの親だけを特別扱いはしません。
非常に制約の多い生活でもあるのです。

実家で親が生活できるならそれに越したことはありません。
しかし、それが無理だから子供たちはみんな悩んでいるのです。

特養化して要介護の重い高齢者ばかりの老人ホーム

老人ホームの種類というものをご存知でしょうか?
まずみなさん老人ホームといってイメージするのが特別養護老人ホーム(通称:特養)だと思います。
病院などの公的機関が多く経営していて費用も安いのですが、ほとんどの特養は満床でなかなか入ることはできません。
また原則要介護3以上の方しか入居できません。

そこで民間の老人ホームが選択肢に入ってきます。
民間の老人ホームには
サービス付き高齢者住宅
住宅型老人ホーム
介護付き老人ホーム
があります。
ちょっと前までは私はみなさんにご説明する時に
サービス付き高齢者住宅バリアフリーの賃貸マンション
住宅型老人ホームまかない付きの寮
介護付き老人ホーム病院の延長
という風に説明していました。

ですから
サービス付き高齢者住宅まだまだ元気なアクティブシニア
住宅型老人ホームちょっと介護が必要になて来た高齢者
介護付き老人ホーム手厚い介護・看護が必要な高齢者
という位置づけでした。
ですから、必要な医療体制や看取りなどから以前では状況に応じて老人ホームも引っ越ししなければならないのが当たり前でした。
しかし、今は少し状況は異なっています。

それは「サービス付き高齢者住宅」も「住宅型老人ホーム」も「介護付き老人ホーム」もみんな特養化しているのです。
以前なら「サービス付き高齢者住宅」や「住宅型老人ホーム」では「看取り不可」が「認知症の方NG]のところばかりでした。
それが今はどこの老人ホームでも
認知症OK
看取りOK
という老人ホームがほとんどです。
それは要介護度の高い高齢者でないと老人ホーム経営が成り立たないからです。
幸か不幸か、老人ホームは低価格化が進んでいます。
値段を安くしないと入居者が集まらないのです。
そこで入居者を要介護度の高い方ばかり優先して高い介護報酬を得ることでなんとか経営を支えています。

ですから
認知症ではない頭がまだクリアーな高齢者
まだまだ元気な高齢者
には極めて居心地の悪い老人ホームばかりなのです。

食事の時やリビングでくつろいでいる時に
大声で騒いで暴れている認知症の高齢者
がウロウロしている老人ホームでは
「こんなとこにおったら頭おかしくなる!」
と訴える方も少なからずいました。

【結論】
・老人ホームなど親を施設に入れるのは最終手段と覚悟してください。
・老人ホームに大きな期待は持たないでください。

②老人ホームもピンキリだからお金の準備は大丈夫?

たくさん老人ホームを見てきた私ですが
「高い老人ホームが必ずしも良いとは断言できないが、少なくとも安い老人ホームよりは良い!」
ということなんです。

素晴らしい老人ホームなどの介護施設もありますが、ひどい老人ホームも少なくありません。
テレビでも【老人ホームの高齢者の虐待】がニュースになっていますが、それは氷山の一角でしかありません。
しかし、それもある意味しかたのない現実もあります。
経営的に厳しい低価格帯の老人ホームではギリギリの状態で回しています。
ただでさえ人手不足の介護業界で優秀な介護スタッフを安い給料でたくさん集めることは不可能です。
そんな経営の厳しい老人ホームの介護スタッフはみんな疲弊しています。

ある老人ホームでは夜間の見守りスタッフがたったひとり
それで数十名の入居者の管理をしていました。
「オムツ交換でいくらナースコールを呼んでも一向に来ない」
「ナースコールのボタンを高齢者が推せないところに移動された」
というのは私も聞いた話です。

親の年金だけでまかなえる老人ホームに大きな期待はしてはいけない

よく「親の年金だけでまかなえる老人ホームを探してください」という相談も多いのですが、そんな老人ホームに大きな期待はしないでください。
老人ホームで10~15万円程度というのはあくまで低価格帯の老人ホームです。

しかし、これが20万円~となるとガラッと雰囲気が変わってきます。
わずか5万円~10万円の予算アップで選べる老人ホームの質がグッと変わる現実も知っておいてください。
まず
・立地条件が便利な場所にあります。(いつでも会いに行けます)
・介護スタッフの顔つき(笑顔)が違います。(余裕のある介護体制です)
が違います。
最初に値段最優先で老人ホームを探していたのならその違いに驚かれることでしょう。

子供の中の誰が?どこから?親の老人ホーム費用を捻出する?

お父さんの介護の担い手は主にお母さんだったのではないでしょうか?
あくまで子供はそのお手伝いという形だったと思います。
しかし次のお母さんの介護では子供(その中のひとりだけ)に一気に負担がのしかかってきます。
その介護の大変さに初めて気づいて「そろそろ老人ホームはいってもらうしかない?」と考え出したのではありませんか?

親を施設に入れる罪悪感を少しでも軽くしたいのなら手厚い介護をしてくれる老人ホームを選ぶべきです。
それには親の年金+αのお金をどこからか捻出しなくてはいけません。

自分の老後のお金も不安なのに親の老人ホーム費用なんて負担できない

子供からすれば
「自分の老後のお金も不安なのに親の老人ホーム費用なんて負担できない」
それも紛れまない事実です。
それと
「親の介護にかかった費用を相続で清算できるか?」
という不安もあります。
遺言書のない遺産分割は相続人みんなの話し合いでしか決めることはできません。
だれか一人でも反対したら遺産分割はできません。
どうしても解決したい場合は家庭裁判所に調停を申し立てる泥沼の争続になるのは回避できません。
その場合でも基本的には「法定相続(子供たちはみんな平等)」が優先されやすいということも知っておいてください。

ですから基本的には
「親の介護にかかる費用は親の財産で賄う」
ことをおすすめしています。

そこで私たちはご実家の売却で親の老人ホーム費用を捻出することをおすすめするのですがよく問題に直面します。
それはすでに親が認知症になっていることが少なくないのです。
この認知症の意思能力は年々厳しくなってきています。
それだけ認知症の方の不動産売却のトラブルが頻発しているので仕方ない現実です。
我々不動産会社にも行政や業界団体から厳しい指導があります。
「認知症の方の不動産売買は後で無効にできる」
そんなリスクもあるのですから我々も慎重にならざる負えません。

後でもめないように老人ホームの費用のことを子供たちみんなで話し合っておく

すでに親が認知症の兆候があって実家を売却できない
そんなケースのご相談も私にたくさんあります。
そんな時に私たちはこんなご提案をすることが多いです。
実家の売却可能価格を査定する
相続の時に子供の誰かが負担した親の老人ホーム費用を清算する
というものです。

【実例】
「経済的に余裕のある長男」
しかし、毎月の老人ホームの費用負担は嫁が難色をしめしている。
「外に嫁いだ娘」
夫に義両親の老人ホーム費用の援助は言い出せない

そこで私たちが査定した親の家の査定価格は1800万円でした。
親の年齢を考えれば10年も老人ホームに入っていることは考えにくい。
そこで目星をつけた老人ホーム費用と親の年金の不足分を毎月6万円を長男お兄が負担することでなんとか話し合いがまとまりました。
6万円×12か月=年間72万円
10年間負担し続けたとして720万円
この720万円は相続した実家の売却で清算する。
そのことを妹で話し合ったことで長男の奥様も納得していただけました。

このお客様は4年後に私たちに再び実家の売却をご相談に来ていただきました。
残念ながらお母様は天国に召され、今までお兄さんが負担してきた分を清算し残りは兄妹で半分ずつという遺産分割です。
「やっぱりお金のことはたとえ兄妹でもきっちりと話し合っておいてよかったです」(兄)
「最期まで母にも手厚い介護をしてくれた素敵な老人ホームでした」(妹)
こんなご感想をいただけると私たちも嬉しくなります。

③親を老人ホームに入れるタイミングを逃してはいませんか?

親を老人ホームに入れるタイミングを逃すと親を施設に入れるのはとても大変になります。

親を施設に入れるタイミング
それはずばり【退院】の時です。
退院して実家に親が戻って落ち着いてからでは親を老人ホームに入れるのはとてもとても難しくなります。

実家に戻って嬉しい親の気持ちもよ~く理解できます。
しかし子供の介護の負担もぐ~んと重くなります。
そしてその介護の苦労は子供の誰かひとりに集中するのです。
なんとかその介護の苦労に耐えていてもいつかそれは限界をむかえてしまいます。
そこで、親を施設に入れることを提案しても他の兄弟たちが反対するものです。
もちうろん親自身も大反対されます。

「あたしゃ老人ホームになんかはいりたくない!」(親)
「なんとか今の状態のままで実家暮らしをさせてあげないか?」(他の兄弟たち)
そんな反対に押し切られてあなたの介護地獄は永遠と続いてしまうのです。

だからこそ「親が病院を退院する」タイミングに合わせて施設に入居をすることをおすすめしています。
高齢になって認知症の兆候も少なからずある親には「病院」と「老人ホーム」の区別もつきにくいこともあります・
入院の延長が老人ホームにすれば、生活環境の変化も受け入れてくるやすいのです。
うまく病院から老人ホーム入居へスムーズに移行できれば、そのうちに親も老人ホームでの生活に順応してくれます。

④予め親を入れる老人ホームに目星をつけていますか?

この「病院」から「老人ホーム」へスムーズに移行するには
予め親を入れる施設に目星を付けておく
ことが大事です。

親が入院するのと同時に大変ですが老人ホーム探しにも着手しておくべきなんです。

ケアマネージャーは老人ホーム探しにあてにはならない

ケアマネージャーは残念ながら介護のプロであっても老人ホーム探しのプロではありません。
介護のケアプランの中に老人ホーム紹介はありません。
また多くのケアマネージャーは親会社の系列の老人ホームへと誘導することも少なくありません。
また多くのケアマネージャーは在宅介護の顧客を減らしたくないので老人ホーム入居には消極的なこともあります。

親の呼び寄せとあわせた老人ホームなら自分で探すしかない

もうひとつケアマネージャーが老人ホーム探しであてにできないのは
「親の呼び寄せ」と「老人ホーム探し」を同時にする
場合です。

年齢的にもそろそろお別れが現実になっている親を老人ホームに入れる場合は遠く離れた田舎の老人ホームよりも子供の近くの老人ホームのほうが最後の時間も有意義に親と過ごせます。
しかし、ケアマネージャーは自分のテリトリーの老人ホームは紹介できても遠く離れた子供が暮らす地域の老人ホームは分からないのです。

ですからケアマネージャーがあなたの親の老人ホーム探しに積極的に協力してくれるような期待はあまりしない方がいいです!

親が入院したらすぐ老人ホーム紹介会社に相談しなさい

ケアマネージャーに親の老人ホーム探しを相談する一方、子供たち自身も自分たちで老人ホーム探しに着手しておくことをおすすめします。

できるだけ時間を作って子供たちみんなでいろいろな老人ホームを見学して回りましょう。
・場所
・費用
・雰囲気
それを総合的に判断して老人ホームを探してください。

ただ
100点満点の老人ホームなんてない
ことだけはしっかりと理解しておいてください。
どこの老人ホームでもなにかしらの欠点はあります。
・費用が高い
・介護スタッフの質
・きれい?汚い?
これはどの老人ホームでもありうる欠点です。

ですから、完璧な老人ホームなんか最初から無いものと考えて親を入れる施設は探してください。

素敵な老人ホームがどうか見つかりますように心からお祈りしています。
そして、「無理なものは無理」という親の介護の現実から目を背けないでくださいね。
あなたはもう十分に頑張ったんだから親を施設に入れることは仕方のないことなんです。